少女は卒業しない

2022.11.04

映画祭

第35回東京国際映画祭 レポート

10月24日(月)~11月2日(水)で開催した第35回東京国際映画祭のアジアの未来部門で『少女は卒業しない』が正式出品され、レッドカーペットとワールドプレミアを実施。河合優実さん、小野莉奈さん、小宮山莉渚さん、中井友望さん、中川駿監督が参加しました!

10月24日(月)実施のレッドカーペットでは、白をベースに黒をあしらったモノトーンな衣装で登場しました。

10月26日(水)実施のワールドプレミアでは、上映前には舞台挨拶に登壇。そのまま観客と一緒に映画を劇場で鑑賞し、上映終了後には観客とのQ&Aセッションも行いました。

校舎の取り壊しが決まった地方の高校に通う4人の少女たちの卒業式までの2日間を描く本作。ストーリーの中核を担う4人の女子高生を演じた河合さん、小野さん、小宮山さん、中井さんは、この日は劇中の衣装である制服姿で登壇しました。

この日の東京国際映画祭「アジアの未来」部門での上映がワールドプレミアとなったが、中川監督は「東京国際映画祭というのを遠い存在に感じていたので、自分の作品がそこで掛かるということがいまだに現実味を帯びていないし、実感がないです…(笑)」と緊張した面持ちを見せつつ「作品は自信があるものをみんなで作り上げることができたので、喜んでいただけるんじゃないかと思います」と語る。

世界で初めて本作に触れる観客と一緒に作品を鑑賞することに、中井さんは「お披露目の場に立ちあえてすごく嬉しいです。ドキドキワクワクって感じです」と笑顔を見せ、小野さんは「みんなで胸を張って、みなさんにお届けできる作品だと思うので、期待して楽しみにしてもらって大丈夫です!」と力強く語る。

小宮山さんは本作について「私自身、いま高校2年生で、この作品を見て、残りの学校生活を充実させたいなと思うことがたくさんありました。いま学生の方は、コロナ禍で普段の学校生活とは違った生活をしていたり、学校行事が縮小されていると思いますが、だからこそこの作品を観て、当たり前の学校生活のありがたさ、大切さを感じていただけたら嬉しいです」と呼びかける。

河合さんは「ワールドプレミアというこの場に観に来てくださったみなさんと、一緒に映画を体感できるというのは、なかなかないことで、劇場でみなさんと空気を共有しながら見るという体験を噛みしめたいなと思います!」と目を輝かせていた。

そして上映が行われ、エンドロールが終わると、客席からは温かい拍手がわき起こった。大きな拍手の中、河合さんらは再び壇上へ。中川監督は「言語化が難しいんですが、この空間に一緒にいられてよかったなと思いました」と感激を口にし、河合さんは「2時間の上映が終わって、みなさんのもとに映画が放たれていったことに、フーっと肩の荷が下りて、深呼吸するような気分です」と安堵の表情を浮かべる。

小野さんは「スクリーンが大きくてビックリしました。自分の顔がボンッと出てきて緊張しました(笑)」と語り、中井さんは「『どうでしたか?』と人と話したい気持ちになりました」と劇場で観客とひとつの作品を“共有”することを楽しんだ様子。

小宮山さんは、相手役の佐藤緋美さんが演じた個性的なキャラクター・森崎の存在に触れ「私は森崎の世界観が好きで、それをみなさんにどう感じていただけるかな? と思ってたんですが、一番後ろの席で見ていて、みなさんの顔は見ることはできなかったけど、笑い声が聞こえて、一緒にこの面白さを共有できて楽しいな、気持ち良い空間だなと思いました」と嬉しそうに語っていた。

質疑応答では、フィルムっぽい映像やBGMの少なさ、そして女子高生たちの会話のリアリティについて質問が飛んだ。中川監督は、ノスタルジックな質感の映像について「卒業をテーマにした作品で、どちらかというと、かつて卒業を経験された方に、よりシンパシーを感じていただけるのでは? と思ったので、『あの頃、こうだったな…』と昔を思い出すきっかけになるような映像の質感を追求しました」と説明。

BGMとしての音楽をほぼ使用しなかった点については「高校時代の世界に引き込んでいきたかったからです。学校の中って特殊な音の空間で、どんな音が鳴っているかでどんなタイミングかわかるんです。例えば静かな空間でチョークで黒板に書く音がすれば授業中だし、生徒がガヤガヤしゃべっていれば休み時間、吹奏楽や部活の音が乗ってくれば放課後と、環境音がシチュエーションによって違うので、それを取り込もうと環境音をたくさん使いました」と意図を明かす。

また河合さんら高校生たちのリアルな会話について「台本は全部用意していたけど、初めてキャストのみなさんと顔を合わせた時に、僕はもう35歳で、高校時代ははるか昔で、みなさんのほうが、高校生のリアルをお持ちなので、(セリフを)好きにアレンジしていいし、しゃべりたいことがあれば相談してくれれば取り込むというスタンスだと話しました。現場で生まれるものを採り入れつつ、偏見によらないリアルな世界観を一緒に作っていけたと思います」とふり返った。

キャスト陣はそれぞれ、個性とリアリティを備えた高校生を演じたが、役作りについて尋ねると、軽音部部長の杏子を演じた小宮山さんは「今回の役は高校3年生で、私はいま高校2年生なので、3年生ってどういう感じなんだろう? という疑問から始まりました。いま通っている学校の3年生や周りの高校生に着目し、身の回りを改めて観察してリアルないまの高校生を自分の中で掴もうと意識しました」と明かした。

進学による上京が決まり、地元に残る彼氏との関係に悩む後藤を演じた小野さんは「脚本を読んだ時、後藤は学校にいそうな、明るくて一見、悩みがなさそうな女の子だなって思ったんですけど、そういう“陽キャ”で悩みがなさそうな子が抱えている悩み、周りには見せない繊細な部分を表現したいと思いました。学校にいる時と、後藤の内側の気持ち――友達に見せる他で見せない顔とのギャップは意識しました」と述懐する。

クラスに馴染めず、いつも足を運んでいる図書室を管理する教師に恋心を抱く作田を演じた中井さんは「監督と初めてお話したとき、『わかりやすく言うと4人の中で“陰”の部分を担ってほしい』ということをおっしゃっていただきました。そこを私が演じることで、作品の共感の幅を広げられたらと思ってやっていました」とふり返る。

そして、料理部の部長で、卒業式で答辞を読む、まなみを演じた河合さんは、演じる上で、窪塚愛流さんが演じた恋人・駿の存在を強く意識したことを明かし「ひとつひとつのシーンで、どういうことをしていったたらいいか? というのを組み立てていきました」と明かした。

10月29日(土)には2回目の上映会を実施。この日は、中川駿監督によるQ&Aが行われ、連作短編小説から脚本へのまとめ方や河合優実さんとの撮影エピソード、カメラワークについてなど、観客からのたくさんの質問に答えました。

『少女は卒業しない』は、2023年2月23日(木・祝)より新宿シネマカリテ、渋谷シネクイントほか全国公開

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